先週からの熊本の地震は甚大な被害を及ぼしました。亡くなられた方々のご遺族にお悔やみ申し上げるとともに怪我をされた方々の回復を祈念申し上げます。この地方でも前々から大地震のことが心配されています。他人事と思わないで、改めて災害避難のことを考えてみないといけないと思いました。
さて、いよいよ来週に迫りました地区研修・協議会のための最終打合せをこれから行いますが、よろしくお願いしたいと思います。指導者会議後、いろいろ修正点が出たため、何かと面倒なことになりましたが、実行委員会のメンバーが精力的に仕事をしていただきました。ありがとうございました。
今日はいま話題になっています「パナマ文書」に関連の租税回避のことを話します。
タックスヘブンtax heavenというのは、税金天国、タックスヘイブンtax havenというのは、租税回避地と訳されます。最近とくに報道されているのでご存知の方も多いと思います。法人税や所得税がゼロあるいは低いため、それらの国へ利益を移すことは、全てが違法ではないものの倫理的には納得いかないものがあります。パナマ文書で公表された世界の著名な政治家や富裕層に対して、パッシングがなされているのは当然です。
租税回避といえば、子会社の損失を組織再編することによって自社に取り込んだり、グループ会社間の自社株買いを活用して生じた譲渡損失を自社の利益と相殺することにより税負担の軽減を図る取引が、国税当局と企業との間で裁判になっています。
前者は、巨額の欠損金を抱えていたソフトバンクの子会社を合併して自社の利益と相殺したヤフー事件があります。。一方後者は、日本IBMの親会社(日本法人、中間会社)が、米国IBMから資金提供を受け、米国IBMの持つ日本IBM株を購入し、それを子会社の日本IBMが買い取るという取引です。
いずれも2014年に最も注目された税務訴訟のケースで、日本IBMは、この自社株買いに伴い、みなし配当とほぼ同額の譲渡損失が生じることとなり、みなし配当の方は非課税で譲渡損失の方は利益と相殺できるので、結果として5年間で4000億円を超える所得の税負担を軽減することができたといいます。どちらも、「損失」を利用することにより、自らの税負担を軽減するという取引で、脱税でもなく節税でもない、いわゆる「租税回避(行為)」と認識されています。
このような行為に対して国税当局は、法人税法に規定されている同族会社の行為計算の否認規定(法人税法132条)と、組織再編にかかる行為計算の否認規定を適用して、どちらの行為も否認をしたが、納税者側は納得せず裁判になったというわけです。
結果、ヤフー事件の方は、1審(東京地裁)も2審(東京高裁)も国税当局が勝訴、上告するも最高裁は2/29上告棄却したためヤフーの敗訴が確定し、178億円の追徴となりました。一方IBM事件の方は、2/19最高裁は国側敗訴、IBM勝訴ということになり、還付加算税を含めて千数百億円をIBMに戻すことになりました。
事実関係が異なるから単純な比較はできませんが、2つの事件を判断する法律の規定・要件は、どちらも「(当該行為・計算が)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかという、同じ文言です。
これをそれぞれの事件に適用するにあたって、ヤフー事件では、「(1)取引が経済的取引として不合理・不自然である場合、(2)当該効果を容認することが、組織再編成税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかである場合」の2つが判断の基準として判示された。
アメリカでは、節税目的で本社を税率の高い国から低い国へ移転させるインバージョンのM&Aが、オバマ大統領になってから30件あり、最近では米製薬大手で世界の医薬品売上高でトップでバイアグラで有名なファイザーが去年の11月23日、アイルランドの同業アラガンとの合併に合意した件がありました。買収総額は何と1600億ドル(約19兆7000億円)に上り、製薬業界のM&A案件では最大規模になります。高脂血症リピトールの特許切れなどパテントクリフ(特許の壁)に直面していることも理由ですが、ファイザーがアラガンに目をつけたのは、その本社が法人税率の低いアイルランドにあることと、深くかかわっています。
ファイザーは今回の買収を機に、本社を、米国からアイルランドに移転することを計画。実効税率を2014年度の25.5%から、合併初年度に17〜18%程度へと低下させることをもくろんでいましたが、アメリカ財務省の規制強化を受け、今月6日にこの計画を断念しました。
これらのことから、税金をなるべく少なくしようとするのは経済人として当然のこととはいえ、その税金で国家が成り立っているわけですから、極端な際どい節税は当局のマークにあうのでやめた方がいいかもしれませんね。